昨年度に引き続き、動く錯視に関するf MRI実験を行った。以前の研究では基本的なブロックデザインを用いて錯視図形と統制図形の比較を行ったためにVI野では違いが見いだせなかったが、本研究では順応法を用いた結果、VI野に始まる広範な視覚野での応答が明らかになった。昨年度の結果は2010年1月の日本視覚学会冬季大会で発表し、修正を経て次年度2010年5月のVision Sciences Societyで発表された。それらの議論を経て論文として投稿の準備を行っている。次に、動きと両眼立体視に関する実験をロンドン大学ロイヤルホロウェイ校のSmith教授との共同で継続したが、現在のところ有意義な結果には至っていない。fMRIスキャナ内での両眼立体視を実現する装置は調整が難しく、被験者に負担をかけるため、改良が必要であろう。引き続き検討を要する。また、A.Lingnau博士らと共同で行ってきた速度知覚に関する研究がJournal of Vision誌に掲載された。視覚野において時間周波数の表現から速度の表現への移行を検討したもので、当初の予想とは異なり、初期段階のVI野ですでに速度の表現ができるらしいことが報告されている。なお、計画に含めていたマルチボクセル解析について、従来利用してきたソフトウェアBrain Voyagerのアップデートにより簡便に利用できるようになったため、次年度へ向けて実験計画の策定を始めた。
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