研究課題
本年度の主な目標は、1)心の理論尺度および感情理解テストの縦断データの収集、2)幾何学図形の動きに対する選好、3)視線による歩行方向知覚、であった。1)心の理論・感情理解の縦断研究:生後5ヶ月時点から開始した社会的認知の縦断調査を終了した。32人で開始したが、最終的には、20人になったが、就学前期までのデータがそろった。心の理論尺度課題(Theory of Mind Scale)は、Wellmanら(2004)を基にして作成されたもの、感情理解テスト(Test of Emotion Comprehension)は、Ponsら82004)を基に作成されたものであった。当然の結果ではあるが、年齢とともに、それぞれのテストのスコアが上昇してきた。初期の社会的認知の発達との関係は引き続き解析中である。2)幾何学図形の動きに対する選好:10ヶ月児を対象に、2つのタイプの刺激を呈示した。ひとつは、一方の幾何学図形がもう一方の幾何学図形に攻撃を行うように解釈されるアニメーション刺激、もうひとつは、2つの幾何学図形がランダムに動いている刺激であった。これらの刺激を30秒間、参加児に呈示したのち、それぞれの図形に対する選好を、選好注視法とリーチング選択テストにより調べた。その結果、選好注視では差が見られなかったが、攻撃される方の図形を選択する傾向が見られた。すなわち、極めて早い時期からヒト乳児は、同情的態度を示す可能性が示唆された。モラルの萌芽が認められたとも考えられる。3)視線による歩行方向知覚:乳児に、歩行者が乳児に向かって歩いてくるCG刺激を呈示し、アイトラッカーを用いて、乳児の視線の動きを計測した。刺激は、ヒトのアニメーションが、視線を右または左に向けながら歩いてくるものである。通常の刺激であれば、そのような場合は、視線追従が生起し、アニメーションの視線方向と同じ方向に視線を送る。本実験では、参加児を、移動可能群(這い這いなどができる群)と移動不可能群に分け、視線の動きを分析した。その結果、移動不可能群では、アニメーションのエージェントが見ている方向を追従したのに対し、移動可能群では、愛メーションが見ている方向とは逆の方向に視線を送った。すなわち、自身が移動可能であれば、刺激に対して、衝突を避けるような視線の動きを示し、移動が可能ではない場合には、従来通り、アニメーションの視線を追従したのである。最終年度は、以上3点がおもな成果である。
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