研究課題/領域番号 |
20330151
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
|
研究分担者 |
大西 賢治 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30547005)
|
キーワード | ニホンザル / ゴリラ / 生涯発達 / 毛づくろい / 展示動物 / 長期継続研究 |
研究概要 |
勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)においては、昨年度に引き続き、全てのおとなメス(約55頭)を対象とした毛づくろいのデータをのべ約2000バウト記録し、前年までのデータと比較した。高齢メスは、末娘との毛づくろいがより集中しやすい傾向、さらに、頻繁ではなくても、10年以上の毛づくろい関係が継続している異血縁の高齢メスペアの存在などがさらに、明らかになってきた。また、2010年10月から2011年6月までに集団から姿のなくなったメス(死亡、あるいは集団離脱)が6頭おり、これらの個体を毛づくろいパートナーとしていたメスの毛づくろい相手の変化についての検討も加えた。ほとんどの個体が、パートナーを失ったのちに、新しい毛づくろい相手を見出す傾向が示唆された。これらの結果は、前年度までに確認されていることであるが、事例を追加することによって、新しいパートナー選択の戦略が見いだされると思われる。 ゴリラについては、これまでに収集している1997年からの放飼場での近接関係のデータを整理し、集団のリーダーオスであるシルバーバックと4頭のオトナメスの近接関係は14年間にわたって、大きな変化がなく、したがって極めて安定していることが明らかになった。飼育下であっても、このような長期の関係が定量的に明らかになったのは初めてであると思われる。 さらに、霊長類以外の哺乳類における長期の社会関係の様相を把握するため、追加研究として実施しているクロサイの母子関係の観察が生後3年目に入った。単独性であるクロサイの子どもは2歳を過ぎても、母との近接頻度が成長してもほとんど減少しなかった。この事実は母とだけでなく他の集団メンバーと関わりながら成長するニホンザルやゴリラとは大きく異なることだけでなく、キリンなどの置き去り型子育ての種とも大きく異なることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ニホンザルとゴリラのそれぞれについて、当初計画通り、長期縦断的な親和関係の定量的資料を蓄積していると同時に、これらの霊長類以外の哺乳類であるクロサイの長期継続研究も実施できている。従って、ニホンザルとゴリラという霊長類だけでなく、霊長類以外の大型哺乳類のデータを加えることにより、より包括的な、あるいは大局的な見地からの議論が可能なる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までと同様に、ニホンザルとゴリラの行動観察、さらに、クロサイの行動観察を最終年度においても実施する。同時に、これまでに得た定量的資料を分析し、学会発表、英語論文として公開する準備を進める。さらに、次の科学研究費の申請に向けて、この長期継続研究を継続発展するための方向性-社会的ネットワークの世代伝承に関する研究-を明瞭にする。研究は順調に、且つ発展的に進んでおり、大きな問題点は現在のところ感じていない。
|