研究概要 |
音声は一般に極めて頑健で,耐雑音性が高く,母語話者であれば極めて信号対雑音比の低い状態であっても,音声を聞き取ることができる。これは,ヒトの脳がわずかな手がかりと,それまでに学習した知識とをうまく利用し,能動的に知覚的世界を構築しているからこそ可能となることであると考えられる。本研究課題では,このような音声知覚に関する脳の仕組みについて,知覚心理学および聴覚生理学の立場から研究を行うことを目的としている。特に,以下の三つのテーマについて,研究を行う。 (1)音声の知覚手がかり,特に音節端点の検出手がかりを,音声の音響分析,および雑音駆動音声を用いた知覚実験を通じて明らかにする。 (2)高齢者および若年健聴者の聴力測定を通じて,聴力,背景雑音,部屋の残響特性と音声の聞き取りとの関係にっいて明らかにしていく。 (3)聴覚の特性をうまく利用することにより,若年健聴者にとっても,高齢難聴者にとっても聴きとりやすく違和感の少ない音声強調処理技術の開発を行う。
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