研究課題
本研究では、胎児-新生児期の視聴覚世界の研究に比較認知発達研究の視点と方法を導入し、主として以下の4点を明らかにすることを目的として進めている。1)胎児は母親の声をそれ以外の声や音と識別することがわかっているが、声によって表現される母親の感情も識別することができるか。2)母親の声の識別は、胎外から届く声のうち母親の声の頻度が圧倒的に多いことが原因と考えられるが、母親以外の他者(父親や祖母)の声が頻繁に聞こえる日常生活があれば、これらの声の識別も生じるか。3)胎児期に識別の生じた対象には、出生後に聴覚-視覚のクロスモダル知覚が生じるか。4)以上で明らかになる胎児-新生児期の視聴覚特性の発達は、ヒトにもっとも近縁なチンパンジーとどのように共通し、どのように異なるか。本年度は、3)について、人間の胎児期の母親による絵本朗読経験の有無が出生後のクロスモダル知覚に影響を与えるかを調べる課題に着手した。胎内で継続聴取した母親の音声が母親自身の映像/他人女性の映像、音声と感情的に対応する表情映像/対応しない表情映像などと対提示したとき、それぞれの映像を音声なしで提示したとき、音声を映像なしで提示したとき、音声や映像が途中で他の音声や映像に変化したとき、などのさまざまなモードで反応に違いが見られるかを、実験群と対照群で比較する。口開けやnon-nutritive suckingの口唇運動、全身運動、刺激への注視の多寡などを分析するため、資料収集継続中である。また、本年度は、本研究が比較対象としたチンパンジー3個体の出産時の姿勢が人間と同様であることも報告した。母親認知の基盤たる母子関係の姿勢運動的かかわりにおいて人間とチンパンジーが出生時から共通の特徴を有することが見出された意義は大きい。
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Biological Letters
巻: (印刷中)
チャイルドサイエンス
巻: 6 ページ: 5-7
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