これまでのBMIは運動や知覚を補完するものが主であった。しかし、運動情報処理の制限を受けず、意志や意図を脳活動から読み取ってBMIに応用する、いわゆる認知型BMIは、未来のBMIとして期待されている。しかし、特定の脳領域の集合的脳活動を記録する脳波やfMRIを使う現在のBMI研究では、その基礎課程の研究も難しいのが現状である。そこで、平成21年度は、サルの前頭前野からニューロン活動を記録するバイオフィードバックの実験を行った。我々は、サルを使って前頭前野から単一ニューロン活動の記録を行うことにより、脳の中で意志や意図がどのようにコードされているかを明らかにするとともに、その活動を視覚的にフィードバックすることにより、サルが自身のニューロン活動を制御できることを実験的に示した。具体的には、前頭前野外側部の1個の細胞の活動をコンピュータにつなぎ、その活動量に応じて、サルの前にあるコンピュータモニターに呈示されるバーが伸びるようにした。一定の長さまで伸ばすことができれば(逆に伸ばさないようにすれば)報酬を与えるようにすると、サルは自分の前頭前野ニユーロンの活動を上昇させたり、下げさせたりすることができた。これまでのバイオフィードバック実験は、運動指令を取り出したり、見ている視覚像をニューロンデータから再構成するといったであったが、これらのニューロンは、運動や一般的興奮性とは関係なく、認知型BMIのような、意図を伝達する技術の基礎につながるものと思われる。この成果は、Journal of Neurophysiology (2010)に発表した。
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