研究課題
1.今年度は、研究計画に従って研究会を4回、国際シンポジウムを1回開催し、本研究の実践的・理論的・国際的・学際的な拡大・深化を図った。(1)研究会においては、学校現場において「力」という概念がどのような役割を果たしているのかについての知見を得るとともに(筑波大学附属小学校・白岩等氏報告、東京大学・市川伸一氏報告)、遺伝心理学や心の哲学といった領域から見たとき、そうした「力」概念の働きが極めて論争的な論点となることが浮かび上がった(慶応義塾大学・安藤寿康氏報告、立教大学・河野哲也氏報告)。また、京都大学の齊藤直子氏とFlorida Atlantic大学のRicherd Shustermann氏を招いての研究会では、公共哲学や美学において「力」の概念がアンビバレントな位置価を持つことが浮き彫りになった。さらに、研究分担者・研究協力者の著書を合評する研究会を開くこともでき、本研究が成果を挙げつつあることを確認することができた。(2)齊藤直子氏とロンドン大学教育研究所のPaul Standish氏を招いて行った国際シンポジウム"Rethinking Language and Education in the Age of Globalization"(生存科学研究所のプロジェクト「『大人の教育としての哲学』研究会」との共催)では、「力」概念の重要な源泉となっている言語の領域において、この概念を批判的に捉え直すことがとりわけグローバリゼーションの時代において喫緊の課題となっていることが確認された。2.学会レベルでは、2009年8月に行われた日本教育学会大会において、研究分担者の小玉と今井が企画に参加して「メリトクラシーと公共性」と題するシンポジウムを開催し研究成果の一部を公表した。このシンポジウムでは、小玉が司会、研究分担者の広田がシンポジスト、今井が指定討論者を務めた。さらに、昨年の教育思想史学会でのコロキウムをもとに、共著論文「教育における「力」の概念」を『近代教育フォーラム』第18号に掲載した。
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