本年度は、3年度間にわたる研究プロジェクトの初年度であり、プロジェクト・メンバー間で問題意識を共有することを念頭において、研究会合の開催やメールでのやりとりを軸にして議論を深めていった。 主な研究活動は、以下の3領域に分けられる。 (1)国会の各種委員会の中で〈後期子ども〉の現状がどのように語られ、どのような政策が提案・実行されていったのかという点について、議事録等を手がかりにしながら検討を加えていった。エンパワメントを語り促すアクターをまずは中央政府レベルで析出していった。 さらに、都道府県・政令指定都市および市区町村の首長を取り上げ、地方自治の文脈で〈後期子ども〉が政策的にエンパワーされる可能性を探っていった。資料の収集作業はまだ途上であるが、2000年代から1990年代、さらに1980年代までさかのぼることになる。 (2)全国各地で展開される具体的なエンパワメントの事例を観察・分析する作業を展開した。高校から大学、さらには民間の学び舎がエンパワメントを促す可能性を指摘し、当事者である〈後期子ども〉が自ら語り社会とかかわっていくプロセスを描き出していった。 (3)〈後期子ども〉をめぐって社会の側がどのように認識し語っているかを構造的に明らかにするとともに、世代別のデータを収集・分析することによって〈後期子ども〉の自己解放のメカニズムを理論的・実証的に解明することをめざして、全国の成人を対象にした質問紙調査を実施した。質問紙は、選択回答式と自由記述式をともに含めて多面的な内容構成となっている。データの分析自体は、次年度に実施される。
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