研究概要 |
本年度は、3年度間にわたる研究プロジェクトの2年度目であり、プロジエクト・メンバー間の議論を積み上げて、具体的な調査研究の実施と分析を進めていった。 主な研究活動の概要と研究によって得られた知見は、以下の通りである。 (1)全国のブロック・都道府県から層化多段無作為抽出されたサンプル(20歳代~60歳代)を対象に自記式質問紙調査を実施した。回収された1,006名の調査データについて、質的・量的な分析を加えた。 (2)分析の結果、まず、社会の成員たちの多くが「後期子ども」と呼ばれる年齢層(15歳~30歳)の若年層に対して、否定的なまなざしをもっていることが明らかになった。ただし、それらのイメージはさまざまな教育経験等によって左右される可能性が確認された。とりわけ、「信頼できる他者(とくに後期子ども当事者)との出会い」や「高校教育での参加体験型の学び」等によって肯定的・中立的なまなざしへと変容する可能性が示唆された。 (3)また、現代日本の後期子どもの社会意識を中高年層と比較した結果、「希望劣化社会」と称し得るような大きな変化が確認された。将来への希望、公正な社会の実現などをめぐって、後期子どもの未来にかげりをもたらす社会不安が広がっているといってよい。 (4)「後期子ども」のもうひとつの負の連鎖として、格差構造の再生産の実態も明らかになった。就職活動の早期化と個人化などは、新自由主義社会の中でますます促進されてきていることが浮き彫りになった。 (5)全国意識調査と併せて、後期子どものエンパワメント実践事例の収集と分析を継続した。次年度においては、全国自治体の実践事例の収集・類型化と併せて理論的な統合を試みる。
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