研究概要 |
発達障害児の中に, リジリエンシー(resiliency心の回復力)を持った子どもたち(つよいストレスがあるのにもかかわらず、精神的に健康に成長できる子どもたち)がどの程度ありうるのか, そうしたリジリエンシーを持つことができた発達障害児の特徴(個人的特性・親や教師の対応の特徴・環境要因の特徴)がどのようなものであったか, 発達障害児のリジリエンシー形成のためにどのような方策が可能かを検討する試みである。本年度は、こうした発達障害児で二次障害を起こさずに比較的問題が少なく成長できたという意味で、リジリエンスがみられた対象について、(1)病院ケースから抽出された24人の対象者の要因を詳細に明らかにした。そこからは、初期に早く診断がされていること、親の前向きの障害受容、診断後の家族の積極的対応、学校や周囲への障害の実態のオープンさ、無理のない価値観と将来観、周囲の理解者と協力者、などがリジリエンスを促進する要因であることが示唆された。また、他の研究からも、学校内での教師の「さりげない支援」が他の児童の間接支援を誘発する要因であること、障害をもった親自身のリジリエンシーが重要であることなどが、明らかにされた。ここからは、本人にとっても家族にとっても「メンター」がプラス要因であることが共通に示唆される。 初年度の全体的成果は、2009年2月7日福島市において、公開シンポジウム「発達障害のある子の心の回復力(リジリエンシー)を考える」として発表を行い、地域の保育士、小中高の教員、特別支援学校の教員、障害児を持つ父母等に還元を行った。一週間という短い周知期間にもかかわらず約130名の参加者があり、新聞等でも好意的な報道がなされた。
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