研究概要 |
発達障害児の中に,リジリエンシー(resiliency心の回復力)を持った子どもたちがどの程度ありうるのか,そうしたリジリエンシーを持つことができた発達障害児の特徴(個人的特性・親や教師の対応の特徴・環境要因の特徴)がどのようなものであったか,発達障害児のリジリエンシー形成のためにどのような方策が可能かを検討する一連の研究を継続してきている。本年度は、とくに発達障害の大学生が大学の中で適応し、リジリエンスを達成するために大学の環境要因として最も重要な教員、職員、相談員としてのカウンセラー、周囲の学生たちが、彼らへの支援についてどの程度のものが許容されるべきだと考えているかについて東北大学、福島大学、福島医科大において、また全国の大学の学生相談担当者に対して広範囲な調査を行った。その結果、発達障害学生の学業支援で何が許容されるべきかについて、実質的に最大の権限を持っている教員と相談員との間に大きな乖離があることが明らかになった。その中でも「制度・システムの柔軟な運用」を要する支援は、教員があまり許容的ではなく、「コミュニケーションと学習方法の構造化」「集団場面の負荷軽減」も、教員は学生の限界を知っている相談員よりも、やはり許容的ではなかった。こうした結果からは、発達障害児たちが、成長し大学というレベルまでは到達できても、その後のリジリエンスを達成するには、大学という教育機関のすべての構成員の理解と柔軟な対応が必要になることが示唆された。また、リジリエンシーそのものや発達障害児を支える要因について、学会で講演や発表を行い、さらに発達障害児の自尊心測定に関する論文等を公刊することで、研究成果にかかわる公表を行ってきた。
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