研究概要 |
全国の私立高校(1,382校)の管理職および私立高校(1,379校)の養護教諭を対象に、特別な配慮を要する生徒の実態と支援についての実態調査を行い、私立高校における特別支援教育の実態と課題を検討した。私立高校における発達障害や特別配慮を要する生徒の在籍実態、生徒を受け入れる学校の支援体制や取り組みの実施状況などが明らかとなった。私立学校にも特別な配慮を要する生徒が在籍していることは明らかになり、「私立高校ならではのきめ細やかな配慮・対応」「中学校からの勧め」「学力」「一人ひとりを大切にする教育」「保護者の要望」によって評価・選択されていた。このように私立高校で従来から行われている丁寧できめ細やかな教育を求めて選択する特別な配慮を要する生徒が多い現状を鑑み、国公私立の区別なく特別支援教育を進めていくことは必須の課題である。その際に、私立学校の独自性を尊重しながらも、持続可能な特別支援教育システムの構築に向けて検討していくことが重要である。そのための検討課題として以下の点を指摘できよう。(1)歴史や伝統、建学の精神、独自の教育理念・方針と特別支援教育の接合のあり方、(2)私立高校の教職員の意識・知識の平準化、(3)特別配慮を必要としない生徒・保護者の特別支援教育やインクルージョン教育に対する理解・啓発の課題、(4)中高一貫など、公立学校とは違った同一学校法人内での各学校種連携のあり方や特別支援教育の一貫的体系化の検討、(5)公私の差なく私立学校にもアクセスしやすい専門機関(行政、教育委員会、各種専門機関、公立各種学校等)とのネットワークの構築、(6)教務規定の弾力的な運用などによる入学試験や単位取得・卒業認定・欠時数への配慮、これまでとは異なる評価基準の設置、いわゆる「ダブルスタンダード」の問題、(8)私立高校の特別支援教育推に必須である国や行政からの財政的措置。さらに特別な配慮を要する生徒の在籍や支援の実態が未解明である私立中学校においても早急に実態と支援の現状を把握し、生徒一人ひとりの困難・ニーズに寄り添った教育体制や指導のあり方を検討することが緊要の課題である。
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