研究概要 |
今年度はルート系のゼータ関数のうち、とくに例外型ルート系 G_2 に対応するゼータ関数についての研究を推進し、奇数を含むような正の整数点での G_2 のゼータ関数の値が明示的に求まる場合について、なぜそれが求まるか、についての理由付けをルート系の理論の立場から行ない、また奇数を含む関数関係式を証明して、奇数点での種々の明示公式を導いた。その結果、整数点 (k_1,k_2,...,k_6) での値が、もし k_1+k_2+...+k_6 が奇数であれば、Riemann ゼータ関数および法3の原始指標に付随する Dirichlet L 関数の特殊値によって表示できる、という予想を定式化し、その多くの実例を与えた。これはいわゆる parity result の G_2 での類似と見なすことができる。この方向での岡本による最近の結果がこの予想への部分的な解答になっていることも確認した。一方、多重ゼータ関数のp進的な扱いの研究も進め、p進多重ゼータ関数の負の整数点での値の明示的な公式、Kummer 合同式の多重版の証明を行なった。古庄による多重p進ポリログとの関係が見いだされ、正の整数点での値についても理解を進めることができた。また Choie との共同研究によって係数付きの二重ゼータ関数の関数等式についても論文をまとめる段階に到達した。普遍性理論については Dirichlet の L 関数について、ある種の合成型同時普遍性定理の証明に成功した。これは強普遍性であるため、L 関数の(高階)導関数の一次結合の零点分布に応用することができる。この内容については3月に韓国の浦項工科大学で行なわれた国際シンポジウムにおいて講演を行なった。この結果と自己回帰性との関連を探るのが今後のひとつの課題である。
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