筆者はProkhorovとの共同研究で、端末的な3次元Qコニック束f:X→Zに対して、Iskovskikh予想を解決し(前科研費による成果で、今年出版された)、また、曲面Zの特異点上のファイバーが既約の場合にも構造を決定した(前科研費の期間中に投稿し、今年出版された)。これにより、Zの特異点上のQコニック束の構造は解明された。 今年度は、曲面Zの非特異点上の既約な特異ファイバーに対して、Reidの一般象予想(General Elephant Conjecture)という予想を証明した(現在投稿中)。これは、特異ファイバーの近傍で反標準線形系の一般元がDu Val特異点しか持たないという主張で、特異ファイバーの構造解明のステップになる重要な結果である。 また、Prokhorovと共同で、3次元端末的Qデルペゾ束に対して、特異ファイバーが他の因子の自然数m倍になっているなら、その自然数mは6以下であることを示した(印刷中)。その証明は、Reid型のRiemann-Roch公式を用いた数値的議論である。この結果自体は強力なものではないが、mとして非常に少ない可能性しかないことは、分類の対象になりうることを示しており興味深い。 なお、川ノ上と松木は2008年12月の研究集会において、正標数の局所特異点解消のためのアルゴリズムを提出した。まだ最終的なものではないが、注目に値する成果である。
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