今年度、突施計画に基づき行った研究による成果は次の通りである。 1.閉リーマン面から複素フィンスラー多様体への写像に対して、コーシー・リーマン作用素に付随して、自然なエネルギー関数と閉リーマン面上の2次微分が定義される。あたえられた写像が調和写像、すなわちこのエネルギー汎関数の臨界点であるとき、2次微分は正則2次微分となることを証明した。この結果により、正則写像でない調和写像の特異集合(コーシー・リーマン作用素の零点集合)が有限集合となることが導かれる。 2.上記のエネルギー汎関数は、ディリクレ積分の一般化として定義されるエネルギー汎関数とは一致しないので、汎関数として通常の意味での凸性をもたない。そこで、このエネルギー汎関数を実表示することにより、凸性が阻害される様相を解析した。 3.その結果、値域の複索フィンスラー計量がケーラー条件をみたす場合には、この二つの汎関数の臨界点は一致することを見出した。これにより、臨界点となる調和写像に対して、通常の方法でアプリオリ評価をえることが期待される。 4.上記のエネルギー汎関数は、最近活発に研究されているカルタン汎関数の理論と密接に関係していることが明らかになった。そこで、カルタン汎関数の変分問題と関連する問題に関してワークショップを開催し、今後の研究の進め方に関して新しい知見をえた。
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