研究概要 |
リーマン面のモジュライ空間のコンパクト化として標準的なものに「ドリーニュ・マンフォードのコンパクト化」がある。「常識的」にはこの上にはノードのみをもつリーマン面の退化形が並んだ普遍族があると考えられているが、「松本・モンテシノスの定理」の帰結として、実質的にすべての退化形を含む普遍族があるように思われる。今年度はその証明の構想を固めることを行った。とくに、タイヒミュラー空間への写像類群の作用がどの程度「効果的」かという問題と上記の普遍退化族の存在との関係が明らかになった。研究分担者の足利正氏は吉川謙一氏とのモジュライ空間上の符号数因子に関する論文、石坂瑞穂氏とのデデキント和に関する論文、および、単著で、ある符号不足数に関する論文の3編を執筆し、レフェリーと交信しつつその改訂を行った。その結果、上のうち、2つはアクセプトされ、出版予定となった。それと同時に、退化リーマン面族のファイバー芽の堀川指数やエータ不変量についての新しい知見の可能性を探究した。 今年度は2つのシンポジュームを開催(共催)した。 一つは平成20年9月12日から16日にかけて「特異点と多様体の幾何」と題するシンポジューム(於:草津セミナーハウス)、もうひとつは平成21年3月9日から12日にかけて「Branched Coverings, Degenerations, and Related Topics」と題するシンポジューム(於:広島大学理学部)である。
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