研究概要 |
本年度は計画初年度として,数値計算の手法の検討と数値コードの整備を行った.これまで開発した時間発展コードをもとに数値コードを整備するとともに,時間発展の数値計算をいくつかの場合について実行し,球殻内対流への安定成層の効果を調べた.上層に安定成層を伴う高速に回転する球殻内の有限振幅熱対流についての系統だった数値実験を実施した結果から,強い安定成層の存在が赤道において球殻の回転角速度を下回る流れ(赤道逆行流)の生成と助長することが示された.また高速に回転する球および球殻内に生じる動径方向にらせん状に広がった柱状の熱対流の構造が,実は内側から外側へ伝播するロスビー波の動径方向の局所波数の増加に対応していることを見出した.さらに比較のため磁場の入った場合についても,回転球殻中の磁気流体ダイナモに対数する上端境界条件の影響を調べた.その結果,上端を粘着条件から応力なし条件に変更するとダイナモ作用の維持が困難となる傾向が見いだされたが出現する磁場の構造は粘着条件の場合と大きな変化が見られなかった.非線形現象の解析方法として不安定な周期軌道による方法を検討しモデルカオスにおいて数値的検討を行った.また回転球に伴う流れと関連する例として,極冠など境界付き流れおよび木星についての対流計算を行った.これらの計算結果に基づき,回転球殻内対流の第一分岐解を数値的に精度よく求めその線形安定性固有値問題を能率よく計算する方法の検討とコード化を進めており,次年度に継続する予定である.
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