研究概要 |
本研究は、地球惑星科学に関連して現れる典型的な熱対流系、特に、回転する球殻内の熱対流系における対流パターン形成機構の解明を目的とする.この対流系は、それ自身基本的な流体系であるが、地球や惑星の内部におけるマントルや核の流れパターンを想定して理想化された系でもある.ここでは内側境界と外側境界の温度差を大きくするとき最初に分岐する対流パターンについて,臨海安定性曲面を数値的に求め,対流パターンの東西位相速度と球殻回転速度の関係およびその機構の特徴を調べること,また内外球殻と流体の角運動量配分など球殻熱対流の基本性質の研究を行うことが目的である.平成23年度は,解の分岐ダイヤグラムに関して特に,内外球殻が同期回転の場合および3軸回転自由度を持つ場合について,角運動量配分と流れパターンの南北対称性に着目して数値的研究を行った.計算は内外球殻が同期回転する場合の解の数値的分岐解析を拡張すること,および時間発展の数値実験によって実施した.その結果,同期回転の場合と3軸回転自由度をもつ場合,いずれの場合も,臨界Rayleigh数からその数倍のRayleigh数までの間は流れパターンはカオス的ながらも南北対称性を保ち,それよりも大きなRayleigh数において初めて南北非対称パターンが出現することが見出された.球殻のx,y方向角運動量はこの南北非対称パターンの領域において非ゼロの値をとり,角運動量ベクトルはカオス的に変動すること,また内外球殻が3軸回転自由度を持つ場合は,同期回転の場合に比べ,流れの南北非対称パターンの発現が高いRayleigh数において生じることを数値的に見出した.なお外側球殻は,Rayleigh数の増加と共に,初め流体部分よりも速く回転(prograde)しているが,次第に流体部分よりも遅く回転(retrograde)するようになるとの結果を得た.
|