研究概要 |
1. 完全WKB解析においてポテンシャルが単純極を含むシュレーディンガー作用素は単純変わり点作用素と同程度に基本的な対象である,と云う認識の下に,単純極と単純変わり点を併せ持つ作用素(MPPT作用素)のsemi-globalな変換論を小池,神本晋吾(東京大学大学院生)と協力して展開。(現在論文執筆中。)特に,小池が約10年前に導入した“ghost operator"(主要部に変わり点も特異点も含まないにも拘わらず,そのWKB解の特異性が変わり点の近傍において観察されるものと類似している作用素)が,青木・河合・竹井による2個の単純変わり点を持つ作用素(MTP作用素)の解析(Advanced Studies in Pure Math., 54, 2009, pp.19-94)における2重変わり点作用素と同様の役割を果たすことを示した点は,今後のWKB解析研究において重要であろうと考えている。 2. 小池・竹井と協力して,単純極作用素の概念を高階作用素に拡張し,そのような作用素のWKB解に対する接続問題を解決。(RIMS Preprint 1658, 2009) 3. 竹井と協力して高階パンルヴェ方程式の1型変わり点の近くでの標準型を決定し,現在本論文を執筆中。 4. 青木・竹井と共に,P_J(J=II,IV)型高階パンルヴェ方程式発見者の一人であるN. Joshi教授(シドニー大学)を訪ね,同氏との議論を参考に高階パンルヴェ方程式の2型変わり点の近くでの標準型を摸索。竹井が退化ガルニエ系を用いた解析により多分標準型を与えると期待される方程式を見付けたが,未だその方程式の解の具体的な考察を行うには到っていない。来年度以降の当研究課題の重要な目標である。
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