研究概要 |
1.河合と竹井が協力して「高階パンルヴェ方程式(P_J)_m(J=I,II,IV;m=1,2,…)に対し、その1型変わりの近くに於てそのインスタントン型解は古典的I型パンルヴェ方程式の解に変換できる」と云う結果を公刊した。(Publ.RIMS,47(2011),153-219)議論は高階パンルヴェ方程式の背後に在るシュレーディンガー方程式のWKB解析的半大域的変換論に基く。 2.河合、竹井および神本晋吾(東京大学大学院生(平成23年度))が協力してM2P1T(即ち単純極(P)2個、単純変わり点(T)1個が合流する(merging))シュレーディンガー方程式の半大域的な構造を研究し、それがMathieu方程式に変換されること、さらに単純変わり点を単純極に比して"遠くに"追い出すようにパラメタを操作することによって、そのfixe dsingularitiesでのalien calculusを超局所解析的手法により遂行できることを示した。議論は本研究計画の大きな目標の一つである「完全WKB解析と超局所解析の交錯点の研究」の模範となるものであるが、論文は余りに厖大なものとなるので(RIMS Preprint 1735(2011)は216頁ある)Mathieu方程式に特有と思われる部分に焦点を合わせた速報を"The Mathematical Legacy of Leon Ehrenpreis (Springer, 2012)"に発表した。 3.本研究計画の成果を成書とする準備の為、超局所解析学・WKB解析の両方に詳しいA.Weinstein教授(UCバークレー)のセミナーで河合が総合報告を行い、幸いにして好評であった。 4.完全WKB解析の出発点の一つであるBender-Wuの論文(Phys.Rev.,184(1969))が元来場の量子論の解析を念頭に置いていることに鑑み、解析的S-行列論の権威者H.P.Stapp教授(ローレンス・バークレー国立研究所)と河合が、"S-行列の摂動展開に完全WKB解析を適用する際にまず取り組むべき主題は?"と云う形の問題設定の下に議論し"長らく懸案の3粒子閾値(3-particle threshold)近くのS-行列の構造を、trussbridge diagram函数のボレル和として考えてみよう"と云う共通認識を持つに到った。現在この方向でStapp、本多尚文(北海道大学・准教授)と河合が共同研究を開始している。
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