研究概要 |
主な研究目的は,拡散方程式の解の挙動と領域の幾何の関係を調べることであった。主な研究成果は2つある。1つは超平面の不変な等温面による特徴付けを与えたことであり,もう1つはある非線形拡散方程式の非定数境界値をもつ初期墳界値問題において解の初期挙動と境界からの距離関数の関係を得たことである。前者において,N-1次元ユークリッド空間全体上の連続関数gのグラフの表す超曲面をSとする。Sを境界にもつN次元空間の領域Ωについて,初期値を0境界値を1とする熱方程式の初期境界値問題を考える。Ω内の超曲面Γが任意の時刻で等温面になっているとき,Γを不変な等温面という。gが大域的にリプシッツ連続でΩ内に不変な等温面が存在するならばSは超平面に限ることを示した。この結果を論文: R.Magnanini and S.Sakaguchi「Stationary isothermic surfaces and some characte rizations of the hyperplane in the N-dimensional Euclidean space」(国際学術誌に投稿中)にまとめた。これは以前の結果(Indiana Univ. Math. J. 56(2007),2723-2738)の格段の改良である。この結果の概略を研究発表に記載の論文として発表した。後者において,有界な境界をもつ領域Ωにおいて初期値を0境界値をf(x)とする拡散方程式の初期境界値問題を考える。f(x)は2つの正定数の間の値をとるとする。このとき,解からできるある関数と時刻との積が境界からの距離関数の2乗に初期時刻で収束することを示した。この結果を同著者の論文「Nonlinear diffusion with a bounded stationary level surface」 (国際学術誌に投稿中)の一節にまとめた。
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