研究概要 |
主な研究目的は,拡散現象を記述する偏微分方程式の解の挙動と領域の幾何の関係を明らかにすることであった。主な研究成果は2つある。1つは超平面の不変な等温面による特徴付けの研究を発展させて,ある重要なクラスのワインガルテン超曲面を記述する完全非線形楕円型偏微分方程式に対するリュービル型定理を与えたことであり,もう1つはある一様放物型の非線形拡散方程式に対する初期境界値問題および初期値問題において解の初期挙動と境界の主曲率の関係を得たことである。前者において,一般次元ユークリッド空間全体上の大域的リプシッツ連続関数gのグラフの表す超曲面をSとする。Sがある重要なクラスのワインガルテン超曲面ならばSは超平面に限ることを示した。つまり,gがあるクラスの完全非線形楕円型偏微分方程式の解ならばgは一次関数に限ることを示した。この結果を2009年6月に東北大学で開催された日伊の国際研究集会で発表し,論文(S. Sakaguchi, Discrete and Continuous Dynamical Systems-Series S掲載受理)にまとめた。これは昨年度に発見した結果(R. Magnanini-S. Sakaguchi, J. Differential Equations 248(2010), 1112-1119)を特別な場合として含む。後者において,非有界とは限らない滑らかな境界をもつ領域Ωにおいて初期値を零,境界値を正定数とする非線形拡散方程式の初期境界値問題および領域Ωの補集合の特性関数を初期値とする初期値問題を考え,境界に1点で接するΩ内の球上の解の空間積分の初期時刻での漸近公式に接点での境界の主曲率が現れる事を示し,領域の境界の近傍での非線形拡散方程式の解の初期挙動と領域の幾何の関係を明らかにした。この結果を2009年11月に京都大学数理解析研究所主催の研究集会「現象解析と関数方程式の新展望」で発表した。この論文は準備中である。後者の結果の証明では昨年度に証明された結果(R. Magnanini-S. Sakaguchi, Annales de l'Inst. Henri Poincare(C)Analyse Non Lineaire掲載受理)が重要な役割を果たした。
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