研究概要 |
主な研究目的は,拡散現象を記述する偏微分方程式の解の挙動と領域の幾何の関係を明らかにすることであった。主な研究成果は2つある。1つは一様放物型の非線形拡散方程式に対する初期境界値問題および初期値問題において解の初期挙動と境界からの距離関数の関係を境界が非有界な場合に拡張し,それを利用して,非線形拡散方程式の解の不変な等位面による超平面の特徴付けの定理を与えたことである。もう1つは線形および非線形拡散方程式の解の不変な等位面による球面の特徴付けの定理を境界が有界で境界が外部の境界と一致する滑らかとは限らない一般の領域に対して示したことである。特に後者は以前の領域が外部球面条件を満たすという仮定の下に示された結果(R. Magnanini and S. Sakaguchi, Ann. of Math.156(2002),931-946)のほぼ最終的な改良として重要な意味をもつ。これらの結果を論文:R. Magnanini and S. Sakaguchi「Interaction between nonlinear diffusion and geometry of domain」(国際学術誌に投稿中)および論文:R. Magnanini and S. Sakaguchi「Matzoh ball soup revisited : the boundary regularity issue」(国際学術誌に投稿中)にまとめた。これらは米国コーネル大学のarXivにプレプリントを公開中である。さらに,前者については2010年5月のドイツ・ドレスデンでの国際会議the 8^<th> AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applicationsおよび2010年9月の名古屋大学での日本数学会秋季総合分科会において成果発表を行った。また,後者については2011年3月の早稲田大学での日本数学会年会において成果発表をアブストラクト提出という形で行った。(大震災で日本数学会年会自体は中止された。)今後の研究の展開として,半線形放物型方程式の初期値問題において,解の時刻無限大での挙動と解の幾何学的形状の新しい関係を学振特別研究員の川上竜樹博士を研究協力者に加え共同研究を開始し,発端となる成果を得て現在論文を準備中である。
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