研究概要 |
主な研究目的は,拡散現象を記述する偏微分方程式の解の挙動と領域の幾何の関係を明らかにすることであった。主な研究成果は3つある。 (1)準線形楕円型方程式に付随する変分問題を同じ再配分をもつ関数のクラス上で考えて,解の存在,一意性を示し,さらに領域の対称性と解の対称性の関係を明らかにした。 (2)非線形拡散方程式の解の不変な等位面による超平面の特徴付けの定理をスライディング法を改良し,より広いクラスの領域に対して示した。 (3)熱方程式の解の不変な等温面による超平面の特徴付けの定理を有界集合上の振幅が有界である関数のグラフを境界に持つ領域に対して示した。これは,以前にリプシッツ連続関数のグラフを扱った結果の格段の改良である。さらに同様の仮定の下でワインガルテン曲面を記述する完全非線形楕円型方程式の粘性解に対するリュービル型定理を示し,以前の結果を格段に改良した。 (1)の結果を論文:F.Cuccu, G.Porru, and S.Sakaguchi, Nonlinear Analysis T.M.A.74(2011), 5554-5565として発表した。(2)と(3)の結果は論文:S.Sakaguchi「Stationary level surfaces and Liouville-type theorems characterizing hyperplanes」(投稿中)にまとめた。これは米国コーネル大学のarXivにプレプリントを公開中である。また,2011年6月のイタリア・コルトナおよび2011年7月のカナダ・バンフでの専門家を集めた国際研究集会やその他多くの日本国内での研究集会で積極的に成果発表を行った。最近の展開として,イタリアの研究者と共同で,滑らかではない汎関数に対する変分問題のエネルギー最小解が領域の境界に平行な等位面をもつとき,領域は球に限ることを示し,新たな領域の形状を決定する逆問題を提案・解決し,現在論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に対して相応の進展があり,特に不変な等位面や不変な等温面による超平面の特徴付けの研究では,ほとんど最良な結果が得られている。また,イタリアの研究者たちとの共同研究で特に非線形楕円型方程式に対して,解の挙動と領域の幾何の関係の研究に新たな進展があった。
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