研究概要 |
主な研究目的は, 拡散現象を記述する偏微分方程式の解の挙動と領域の幾何の関係を明らかにすることであった。主な研究成果は2つある。 1.3次元ユークリッド空間上の熱方程式の初期値問題の解の不変な等温面による円柱面と超平面の特徴付けの定理を埋め込まれた平均曲率一定曲面及び極小曲面の理論を利用して示した。 2.速い拡散の場合の多孔質媒質方程式とp調和拡散方程式に対して,初期境界値問題と初期値問題における解の初期挙動と境界の主曲率の関係を明らかにした。この結果を, 解の初期挙動が対応する非線形楕円型方程式の境界爆発解によって記述されること及びある自己相似解の挙動とを利用して示した。 1 の結果を2013年3月の日本数学会年会における特別講演, 2 の結果を2013年2月のドイツ Oberwolfach 研究所での Mini-Workshop「The p-Laplacian Operator and Applications」における講演として成果発表を行った。共に現在論文を準備中である。 なお, 分担者三上は無限次元の Hamilton Jacobi方程式の解の長時間漸近挙動の解析,及び, KPZ方程式の解の新しい定義・存在・一意性について, 部分的な結果を得た。今後,無限次元空間の拡散と領域の幾何の研究に結びつくと思われる。分担者三沢はp調和型退化特異放物型方程式系に対して,弱解のヘルダー評価が成り立つための, 係数関数と外力関数に対する最良の可積分条件を得た。これはp調和拡散方程式系の初期挙動と領域の幾何の関係の基礎として役立つことが期待される。分担者柴田は常微分方程式論的手法・変分法を主な解析手段として, 非線形常微分方程式の境界値問題の解の漸近挙動の詳細な解析を行った。この手法は 2 の発展に必要なより複雑な非線形拡散方程式の自己相似解の挙動の解析に有用であると思われる。
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