24年度は、魚の群行動モデル、森林動態モデル、腫瘍型血管新生モデルについて成果を得ました。先ず、群行動モデルでは魚の群行動に係わる観察事実から提案されたシナリオを確率微分方程式として定式化し、モデル方程式に対して局所解を構成するとともに大域解の存在性について議論しました。さらに本モデルを元に、魚群が集団で餌場を見つける過程を模した最適化スキームの開発を行いました。ベンチマーク問題を使い、スキーム内のパラメータを上手く調節することにより高次元最適化問題においても非常に良い結果が得られることを示しました。 森林動態モデルでは、壮年層木の枯死率にノイズ効果を組み入れた方程式を建て局所解および大域解を構成するとともに、Rudnicki理論を利用して大域解の時間が十分経過したときの挙動について考察しました。特に殆ど確実に森林が消滅してしまう条件、逆に森林が存続し時間無限大での極限密度関数が存在するための条件を調べました。 腫瘍型血管新生モデルでは、走化性と走触性を組み込んだハイブリッド・モデルに対して数値シミュレーションにより解のプロファイルを調べました。特に、内皮細胞の走触性の強度変化に依存して器官内を浮遊する血管細胞の腫瘍への到達時間が大きく変わることを見出しました。 24年度が課題研究の最終年度に当たることから、8月にBologna大学のFavini教授、Hanoi大学のMau教授、大阪大学の田邉廣城名誉教授等を招待し本学において国際研究集会 ”Seminar on Partial Differential Equations in Osaka 2012” を開催しました。関数解析的手法による偏微分方程式の研究について活発な議論を行い、その成果は同名の会議録として纏め大阪大学学術情報庫(OUKA)から公表しています。
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