自己組織化による秩序構造の形成は、設計図や外部からの指示なしで、構成要素が自発的に行う集団行動である。この現象はロバスト性を有するとともに、ゆらぎが大きな役割を果たすという相反する側面を同時に併せ持つ複雑な現象である。本研究では、無限次元力学系の理論で最近新しく導入された指数アトラクタに着目する。同アトラクタがもつ有限次元を有しすべての軌道を指数的に引寄せるというロバスト性と、同時に不安定平衡点の不安定多様体を含むという不安定性を利用して自己組織化現象のロバスト性とゆらぎの役割について数理的な観点から解析する。計画の主な内容は、以下の5点からなる。 (1)確率的力学系を考えロバスト特性を明らかにする。 (2)巨視的な視点からゆらぎ特性を明らかにする。 (3)シロアリによる営巣過程を記述した数理モデルについて解析する。 (4)腫瘍型の血管新生過程を記述した数理モデルについて解析する。 (5)土壌動態と樹木植生の相互作用を組み合わせたマングローブ森林動態モデルを解析する。
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