研究分担者 |
辻井 正人 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (20251598)
梶原 健司 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (40268115)
神本 丈 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (90301374)
石井 豊 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (20304727)
津田 照久 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教 (00452730)
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研究概要 |
パンルヴェ第VI方程式の非線形モノドロミー写像のエルゴード理論および周期点の研究を行った。この研究は主としてパンルヴェ方程式のモデュライ理論的定式化と,代数多様体上の双有理写像のエルゴード理論および周期点の理論を,リーマン・ヒルベルト対応により結びつけ,両者の有機的な統合を果たすことによってなされた。 パンルヴェ第VI方程式は4次元のアフィン・パラメータに依存する。このパラメータ空間にはアフィン・ワイル群が作用している。パラメータがこの群作用の鏡映面に乗っていない場合は,研究代表者たちの以前の研究で既に扱われている。この揚合は,リーマン・ヒルベルト対応の行き先である指標多様体が滑らかな三次曲面をなし,リーマン・ヒルベルト対応そのものが双正則同型となる。この事実が,この場合の研究を比較的やさしくしていた。 今年度は,より困難で興味深い場合である,パラメータが鏡映面に乗っている場合について研究を行った。この場合の困難さは,対応する指標多様体がパラメータの配置に応じた特異点を持ち,リーマン・ヒルベルト対応がそれらの解析的最小特異点解消を与えるのみであるという事実に由来する。そこで,指標多様体の代数的最小特異点解消を取り,リーマン・ヒルベルト対応を双正則同型に持ち上げる必要がある。このことによって初めて,パンルヴェ方程式の非線形モノドロミー写像に狭義共役な,指標多様体上の正則力学系を得ることができる。今年度は,このことを実行し,また特異点解消によって生じる例外集合のまわりで力学系の挙動を詳細に調べた。 続いて,指標多様体をコンパクト化し,力学系を双有理力学系に拡張することによって,代数曲面上の双有理写像のエルゴード理論を適用可能にした。そして,実際にこの理論を適用することにより,パンルヴェ方程式の非線形モノドロミー写像のカオス性を証明した。すなわち,位相的エントロピーの正値性の証明を行い,また混合的で鞍型双曲的な最大エントロピー普遍確率測度の構成を行った。さて,周期解については,それらが孤立せずに曲線となって現れる場合があることが,パラメータが鏡映面に乗っている場合の困難さである。今年度は,このような周期曲線上にある解が超幾何関数解のみであること,および孤立周期解の個数が周期とともに指数的に増大することを示した。
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