研究概要 |
パンルヴェ第VI方程式の非線型モノドロミー写像の力学系・エルゴード理論,および周期点の研究を行う。この研究は,パンルヴェ方程式のモデュライ理論的定式化と,代数多様体上の双有理写像のエルゴード理論および周期点の理論を,リーマン・ヒルベルト対応によって結びつけ,両者の有機的な統合を果たすことによって実行される。 パンルヴェ第VI方程式4次元のアフィン・パラメータに依存し,このパラメータ空間にはアフィン・ワイル群が作用する。パラメータが,この群作用の鏡映面に乗っていない場合は,研究代表者たちの以前の研究で既に取り扱いが行われていた。本研究では,パラメータが鏡映面に乗っている,より興味深い場合を中心に考察する。この場合に,非線型モノドロミー写像のエントロピー正の確率不変測度の構成を行い,付随する力学系のカオス性について論じる。また,この場合には,モノドロミー写像の不変集合として,超幾何関数解に付随する所謂リッカチ曲線が現れる。そこで,リッカチ解軌道の近傍におけるモノドロミー写像の力学系的性質について研究する。 上記の場合には,モノドロミー写像の周期点として,周期曲線と孤立周期点の二種類が現れると考えられるので,それらの個数の評価について研究する。また,この研究に資するために,射影代数曲面上のエントロピー正の保測的双有理写像の周期点の一般的理論の構築を行う。更に,コンパクト複素曲面上の位相的エントロピーが正の正則自己同型をできるだけたくさん構成し,その力学系理論的な性質を調べるという研究を行う。
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