研究概要 |
本年度得られた結果のうち主要なもの2つについて述べる. 非線型Schrodinger方程式系に対して特異摂動問題を考察し,凝集解の存在証明を行った.従来凝集解の存在証明は単独方程式に対して行われることが多く,ポテンシャル関数V(x)の極小点に集中する解の存在等が議論されていた.ここでは方程式系について議論を行い,変分的手法により系としての非自明な凝集解の存在を示すことに成功した.方程式系を扱う際の難しさとして1成分が恒等的に0となる半自明解とすべての成分が0でない系としての非自明解が共存し,これらの識別が必要であること,非線型項がべき関数である比較的単純な場合であっても極限方程式の解構造が未知である点等にある. ここではlocal mountain pass typeの議論を発展させることによりその困難を克服した. またscalar field方程式に関しても研究を行いBerestycki, Lions, Gallouet, Kavianによる存在結果を若干拡張することに成功した.Berestyckiらによる証明は制限問題を導入することにより行われており,次元が3以上の場合と2の場合の証明はかなり異なっていた.ここでは制限問題を導入することなく,symmetric mountain pass theoremを適用することにより次元に関して統一的な証明を与え,また2次元の場合に結果を拡張した. 証明においては対応する汎関数のscaling propertyを考慮した補助関数を導入し,Palais-Smale条件がない状況においても無限個の臨界点を得ている.scalar field方程式は種々な問題の極限問題として現れ,ここでの拡張は他の問題の(若干の)拡張をも可能としている.
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