研究概要 |
本年度得られた結果のうち主要なものについて報告する. 非線型シュレディンガー方程式に対する特異摂動問題に関しては一般的な非線型項をもつ方程式を扱い,ポテンシャルV(x)の極大点に複数個のピークが集中するプロファイルをもつ解の存在証明を行った.従来このような解は非線型項がべき関数であるときにKang-Wei(2000)により示されていたが,その方法は極限問題の解の一意性,非退化性を強く用いたLyapunov-Schmidt法を用いるものであり,極限問題の解の一意性,非退化性を期待できない一般的な非線型項をもった非線型シュレディンガー方程式に対しては適用できない.本研究では方程式に対応する汎関数のgradientを無限次元空間での期待される解の近傍において詳細に調べ,ポテンシャルV(x)の性質を直接反映するR^Nでのflowを合わせ,Trotter formulaにより構成される通常とは異なるdeformation flowを用いることにより解の存在証明を与えることに成功した. さらにポテンシャルV(x)の鞍点に複数個のピークが集中するプロファイルをもつ解の存在についても研究を行い,ある種のミニマックス法により特徴付けられる鞍点に対して,その存在を示した.ここで扱われる鞍点はやや特殊な特徴付けをもつ必要があるが,非退化鞍点に対して適用可能であり,Dancer-Yan(2001)らによる先行結果を大きく拡張するものである.ここで用いた方法は極限問題の非退化性を要求せず,有限次元へのreductionを行わなわず,より直接的に無限次元の関数空間で解を求めることを可能としている.他の問題,特に非線形楕円型方程式系に対しても応用が可能であると期待される.
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