本研究課題は、近未来に展開される、ALMA、VSOP-2、SKAといったプロジェクトによって超高解像電波望遠鏡観測ぶ可能となる状況を視野に入れ、現代天文学における重要課題である、宇宙における冷たい暗黒物質の空間構造を解明することを目標としている。この目標を達成するために、冷たい暗黒物質のハローが銀河・銀河団やその周囲においてどのような状態で存在しているか、つまり質量関数、空間分布、速度分布がどうなっているかを導出することを試み、このようなハローの動力学的状態と銀河形態の形成過程とがどのように関係しているのかを、理論と観測の両面から具体的に解明するプログラム作成の開始を行なった。また、理論と観測それぞれに秀でた共同研究者と互いに有機的に相互作用することにより、暗黒物質に関する研究のまとめと今後の課題について議論を行なった。さらに、重力レンズの手法を用いた暗黒物質の導出方法の開発と具体的な理論的解析の実践、さらに実際の観測データの解析方法の構築といった課題を進めた。特に、当該年度においては、南半球にあるジェミニ望遠鏡の中間赤外線観測機器を用いた観測の機会にも恵まれ、当地の研究者と密な議論を行なうと共に、暗黒物質の存在形態を導くために必要となる重力レンズ像フラックス比の測定を行なうことができた。これらの研究の初期成果を論文としてまとめて発表することもでき、また、その他の研究展開についても論文準備の途中である。
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