本年度も引き続き、フェルミ衛星によるGeVガンマ線の観測と、かなた望遠鏡による可視偏光観測によって、巨大ブラックホール天体からのジェットの研究を遂行した。フェルミ衛星においては、ジェットを斜めから見ている電波銀河からのガンマ線放射について2本の論文を発表した。1つはジェットの根元からの放射であり、これによって、電波銀河のジェットについての物理量を制限できた。もう1つは、ジェットが銀河から離れた場所まで走って形成した強大な電波ローブからのガンマ線の初検出であり、ガンマ線を放射している高エネルギー電子はジェットの根元から来たわけではなく、ローブの中で加速されている可能性が高い。その場合、今まで見つかっている高エネルギー粒子加速の現象とは異なるメカニズムが必要となる。これについては、サイエンス誌に論文として発表するとともに、記者会見を行った。この他、ジェットを正面から見ているブレーザー天体についてフェルミ衛星とかなた望遠鏡で同時連続モニター観測を実行し、5個以上のフレアを同時に検出できた。その可視偏光とガンマ線の振る舞いはフレアごとに異なり、ジェットの中の磁場構造に関する情報が得られつつある。これらの研究成果の一部は、既に論文として発表し、その他も論文化を進めており、まもなく論文発表できる見込みである。
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