本研究では、大学VLBI携観測の拠点である山口32mに22GHzの受信システムを搭載して大学VLBI連携の研究能力を高め、さらに東アジア観測局という大きな枠組みへ研究を展開することを目標とする。 平成21年度は、前年度に製作した受信機の試験を行い、また試験の結果明らかになった課題の解決に専念した。このフィードバックの過程に時間がかかったため、一部の部品調達が年度末となったが、目標とした作業の大部分を達成できた。内容は次のとおりである。 ○受信機の物理状態の測定システムの構築。 受信機の温度・真空度などを常時モニターする機能を確立し、別のテスト結果と比較して性能の確認をした。これは受信機の能力に直接関係するものではないが、何もない状態での受信機開発には必須の作業である。 ○受信機の機能として必要な真空の達成・保持と十分な冷却能力を有することの確認。 真空度は10-4Paまで達し、温度は8K(発熱物なしの状態で)まで達成できた。一方、これらの作業中に、熱流量を考慮すると、現状の設計では温度が少し高くなってしまう可能性があることに気づいた。この対策として、ステンレスの導波管を設置して断熱効果を高めることにした。 ○設置条件の検討と調査を行った。山口32mの給電システムに適合し、設置が可能であることを留意した。これは昨年度の開発でほぼ達成できていることであるが、上記のステンレス延長管の分だけ、外周部も延長した。このことは設置条件には影響せず、むしろ設置が容易になった。 平成21年度の研究により、受信機の基本的な機能である真空の保持と冷却は、基礎実験を終え、十分な性能があることを確認できた。次の作業は増幅器の設置と単体試験である。増幅器およびバイアス電源は入手したので、平成22年度初旬に設置・接続・冷却などの単体試験を行う。その後、山口32m電波望遠鏡に設置した試験と観測を行う予定である。
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