2010年度の研究実積は以下の通りである。 (1)演算子積展開の方法を用いて、ポテンシャルの近距離での振る舞いを解析的に調べる方法を提案し、2フレーバーQCDの場合に核力ポテンシャルが斥力芯を持つことを示した。 (2)上記の演算子積展開の方法を3-flavor QCDに適用し、フレーバーSU(3)の規約表現に対応するポテンシャルの近距離での振る舞いを調べた。フレーバー1重項ポテンシャルなど3つの規約表現では、近距離で引力になることを示した。 (3)アップ、ダウン、ストレンジの3つのクォークの質量が等しいフレーバーSU(3)の極限でのポテンシャルを格子QCDの数値シミュレーションで計算した。ポテンシャルのSU(3)の表現依存性を調べ、SU(3)一重項ポテンシャルは斥力芯でを持つことを見いだした。 (4)ポテンシャルを計算する改良した方法を提案した。この方法用いて、フレーバーSU(3)での1重項ポテンシャルな詳細に研究した。3つの異なる体積で計算を行い、ポテンシャルの体積依存性は予想通りに小さてこと、1辺の大きさが3フェルミあれば体積依存性が無視出来ることを見いだした。また、得られたポテンシャルを使ってシュレーデガー方程式を解き、束縛状態が1つ存在することを示した。この束縛状態は、Hダイバリオンと呼ばれ、その存在の之可能性が縦来から指摘されていたものに対応している。いくつかのクォーク質量で計算をおこない、束縛エネルギーのクォーク質量依存性が小さいことを示した。 (5)核力ポテンシャルのエネルギー依存性、角運動量依存性を、格子QCDのクエンチ近似の数値シミュレーションで調べた。計算誤差の範囲で、エネルギー依存税などが小さいことを見いだし、非局所ポテンシャルの速度展開による微分を含んだ項の寄与が小さいことを示した。
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