本研究は、これまで詳細に検証されていない重力場による量子効果を、超冷中性子の重力束縛状態を用いて詳細に測定することを目的としている。量子論による考察では、重力ポテンシャルにより束縛された超冷中性子は重力鉛直方向に10μmのスケールで離散的な存在分布を示すことが期待される。それを精度良く求めることで量子効果の検証とする。 本研究課題で主要な開発用の一つに中性子感応型CCD検出器がある。これまでに、原子力開発機構にある研究用原子炉から供給された冷中性子ビームと、さらには、ILL研究所において得られる超冷中性子ビーム/極冷中性子ビームを用い、検出効率・空間分解能など基本性能の測定を行った。ILL研究所は、本実験の実験サイトとして第一候補となる研究所である。結果は、検出効率が40%、空間分解能は3ミクロンで、目的とする重力場による量子効果の測定実験に十分耐え得るものである事が確認された。これらの結果は雑誌論文や学会などで発表されている。 高効率の中性子吸収材についてシミュレーションを基にいくつかのサンプルを製作した。来年度予定されているILLで中性子の照射試験の結果を見て、最適な吸収材の製作に入る予定である。 中性子導管や、実験チェンバー、入射中性子エネルギーを選択するコリメーター、また、実験チェンバーの振動特性を測定した上での防振架台など、実験に必要な工学設計を進め、製作した。来年度、それらをILL研究所へ送り、ビームラインヘインストールする。
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