この研究の目的は、Rydberg原子を単一マイクロ波の検出に用いることで、ダークマターとして存在する可能性のあるアクシオンを探索することである。WMAPの観測結果からダークマターの候補は、アクシオンか超対称性粒子にしぼられてきた感がある。この実験装置は、Rydberg原子をつくるレーザーシステム、高磁場を発生させる大きな超伝導磁石、高周波の空洞、装置をmKの極低温に冷却する希釈冷凍機など複雑な装置である。20年度はこれらを新設した低温物質科学研究センターのダークマター実験棟内に、組み上げた。 Rydberg原子としては以前はルビジウムを用いてきたが、浮遊電場によるStark効果を大きくうけて、最終的なS/Nがよくならないことが困難としてあげられた。長谷山らの計算でカリウムでは、このStark効果が小さいことが予想され、より感度をあげた測定が可能となることが予想される。そこでカリウムのRydberg原子のStarkシフトの測定を行ったが、Rydberg原子励起用のダイレーザーの安定性が十分でなくデータの質が十分とはいえないため、最近入手可能となった青色半導体レーザーを使うことを考え、そのシステムの製作を行った。冷却システムの準備も行い、21年度からはカリウムのRydberg原子を用いた測定にはいるための準備を整えた。また研究の現状について、素粒子原子核国際会議(PANIC08)などの国際会議でも報告を行い注目を集めた。
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