研究概要 |
本研究はCERN LHCのビーム衝突により発生する超前方の中性粒子を観測し,そのエネルギースペクトルを求め,宇宙線研究に用いられている各種のモンテ・カルロ・シミュレーション・コードと比較しコードの検証やコード改良に資するのが目的である。LHCのエネルギーは宇宙線の最高エネルギーに匹敵するので,これにより超高エネルギー宇宙線現象の謎の解明に役立てると期待される. LHCは2008年に発生した事故により,約1年の遅れが生じ,2009年9月に加速器の運転が再開された.12月には重心系エネルギーEc=900GeVの衝突が短期間ながら実現し,LHCfもデータを取得した.衝突数は5×10^5で約6000のシャワー・イベントを得た.その後-3ヶ月の休止後,3月末には本来のLHCのエネルギーに近づくエネルギーEc=7TeVの衝突が実現した.このエネルギーは実験室換算で2×10^<16>eVに相当する.その後順調にビームが出る状態が継続し,LHCfとしても繰り越し金を使って,観測を実施した.衝突数は5.5×10^6で5月までにシャワー・イベントを10万例観測した.さらに観測を継続している.実験実施中のデータ解析では900GeV,7TeVともガンマ線は多くのモンテカルロと較べてソフトなスペクトルを示すという興味深い結果が得られている.一方ハドロン(中性子)のスペクトルはハードであり,両方を十分満足するモデルはない.今後2010年度の計画実施で統計をあげ,解析をより精密にして,結果をまとめる予定である.
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