本課題は、ミュオン移行反応により固体水素薄膜へ注入されたサマリウム同位体のミュオン原子を生成し、その同位体シフトや遷移速度に関する研究を提案するものである。ミュオン原子X線の同位体シフトは原子核の電荷分布を反映しており、原子核の形状が同位体間で大きく変化するサマリウム核種での同位体シフトの観測は、固体水素薄膜を用いたミュオン原子生成法の適用元素の拡大及び将来的な不安定核種への展開に向け、重要な試金石となる。サマリウムのミュオン原子X線のエネルギーは約4.5MeVと非常に高く、より効率的にミュオン原子を観測するため、研究の2年目には既存のX線とガンマ線検出システムの性能向上を図り、もう一台の新たなゲルマニウム半導体検出器(ORTECGMX20P4、検出効率20%)及びデータ収集用エレクトロニクスモジュールを購入した。現在、ミュオン原子X線を測定するために3セットの検出器を持っている。また、既設の高性能表面電離型イオン源に関しては、イオンビームの安定性を改善するために、PLCを使って新しい制御システムの構築を目指し続けている。一方、既存の実験設備を用いて、理研RALミュオン施設で次の実験のための準備が進められた。今年度は装置が第4実験ポートから取り外されたので、ミュオン実験はできなかった。
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