本課題は、ミュオン移行反応により固体水素薄膜へ注入されたサマリウム同位体のミュオン原子を生成し、その同位体シフトや遷移速度に関する研究を提案するものである。ミュオン原子X線の同位体シフトは原子核の電荷分布を反映しており、原子核の形状が同位体間で大きく変化するサマリウム核種での同位体シフトの観測は、固体水素薄膜を用いたミュオン原子生成法の適用元素の拡大及び将来的な不安定核種への展開に向け、重要な試金石となる。研究の3年目には、既設の高性能表面電離型イオン源に関しては、イオンビームの安定性を改善するために、PLCを使って新しい制御システムを構築した。京都大学原子炉実験所において、最初のテストがすぐ始まる予定である。また、理研RALミュオン施設にある既存の実験装置を、分解して日本に送り返した。そのため、今年度のミュオン原子X線実験は行えなかった。この実験装置はこの研究プロジェクトを続けるために、新しいJ-PARCミュオン施設(MUSE)で組み立てる計画である。MUSEでは、ミュオンの強度がより高いためより良い実験精度の結果も期待される。一方、1年目と2年目に購入した新たなゲルマニウム半導体検出器(ORTEC GMX20P4、検出効率20%)及びデータ収集用エレクトロニクスモジュールの3セットはJ-PARC/MUSEでのミュオン原子X線実験において使われ始めている。
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