研究概要 |
本研究の目的は、高速散乱振幅自動生成プログラムMadGraphを発展させ、LHCや将来のリニアコライダーにおける新しい物理の発見に寄与することである。 LHC物理解析に向けた事象生成の更なる高速化に関しては、昨年度までの研究で、グラフィック出力用半導体(GPU)を物理現象のシミュレーションに利用することにより、計算効率を従来の100倍近く高める事が可能であることが分かった。本年度は、昨年度導入したGPUを搭載した並列計算システムを使用し、GPU用の散乱振幅計算ライブラリを使ったQED、QCDプロセスの散乱断面積を二桁高速に計算するシステムを構築し、その結果を発表した[論文1,2]。また、物理現象のシミュレーションに重要な役割を持つモンテカルロ積分プログラム(VEGASおよびBASES)、そしてその積分結果を使った事象生成プログラム(SPRING)等をGPU上でほぼ100倍高速に実行させるプログラムを開発し、結果についての発表を行った[学会発表1,2、及び論文4]。これらの成果により1台のGPUで並列度が100の従来の並列計算機システムと同等の計算能力を持つシミュレーションシステムを構築する目処がたった。現在、LHCでの物理現象、特に十分な統計が必要とされるバックグラウンド事象のシミュレーションに必要な全ての標準模型過程の計算のためのシステムの構築を進めている。 新しい物理模型への適用範囲を拡大する課題については、スピン3/2粒子、特にグラビティーノを含む散乱振幅の計算の自動化を達成した[論文3]。これによりグラビティーノが最小質量超対称性粒子となる多くの模型のシミュレーションが可能となる。
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