研究概要 |
本研究では、広帯域(0.1-30THz)のテラヘルツ時間分解分光によって、光生成した電子状態や格子の状態を明らかにする。特に、光誘起絶縁体-金属転移における光誘起金属状態の局在と非局在の狭間にある特異な電子状態の性質や、<100cm^<-1>の低周波格子振動の役割を、テラヘルツ領域の広帯域過渡スペクトル測定により解明する。平成21年度は、新規レーザーシステム(パルス幅25fs)の導入を完了し、それを用いたテラヘルツプローブ光の広帯域化を行った。THz光の発生、検出素子として、ZnTe,GaP,GaSe,DASTなど非線形光学結晶の種類と厚さをかえることによって検出帯域の変化を調べ、15THzまで(従来は、3THz)発生、検出が可能となった。この光源を用いたデモンストレーションとして、電荷秩序による強誘電性を示す二次元有機伝導体α-(ET)_2I_3の近赤外励起-THzプローブ分光を行った。その結果、10-20psの時間スケールにおいて、光誘起金属化によっていったん閉じた電荷秩序ギャップが、再びあいていく様子を捉えることができた。更に、スピン液体状態を示すことで知られる有機ダイマーモット絶縁体において、電荷ガラス状態の揺らぎを反映した、低波数フォノンのモーショナルナローイングを観測することに成功した。また、新しい対象として、強誘電-電荷秩序を示すLuFe_2O_4のテラヘルツ分光をおこない、定常THzスペクトルの温度依存性を詳細に測定し、磁気転移と関係したTHz応答を初めて観測した。次年度に行うTHz励起実験のための準備として、高強度THz光の発生を行った。
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