研究概要 |
1. 収束電子回折法による静電ポテンシャル分布解析法の確立 : まずテスト試料としてSi結晶を用いて収束電子回折法による静電ポテンシャル分布解析を行い, 結合電子によるポテンシャルの低下を明瞭に可視化することに成功した(この結果はActa Crystallographica A誌の2009年の年間cover photoとして採用された). これを通して解析法をほぼ確立することができた. この方法をペロブスカイト型酸化物強誘電体BaTio_3およびPbTio_3に適用し, 静電ポテンシャル分布の可視化を試みた. 現状のモデルでは実験で得た収束電子回折図形の強度分布を十分説明できておらず, 結晶格子の微小な乱れを考慮したモデル(Comesモデル等)の導入を進めている. 2. 電子線ホログラフィーによる静電ポテンシャル分布解析法の確立 : 独・ドレスデン工科大学のProf. Lichteの研究室において, 強誘電体BaTiO_3およびKNbO_3を用いて電子線ホログラフィー実験を行った. 収束電子回折を併用して精密に結晶方位制御を行うことで, 回折効果の影響を排除して強誘電ドメインにおける静電ポテンシャル分布の解析が可能なことを示した. 90度ドメイン境界において理論的に予測されているポテンシャルステップの観測に必要な条件を明らかにし, 可能性を検討した. 3. 多重散乱理論に基づく収束電子回折強度解析ソフトウェアの高速化・高度化 : Opteron qcore CPUを4つ搭載したワークステーションを購入し, 新しいMPICHを用いて, われわれが独自に開発してきた多重散乱理論に基づく収束電子回折強度解析ソフトを高速化して動作させることに成功した. これにより次年度導入予定のクラスター計算機による一層の高速化が可能であることを確認した.
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