研究概要 |
1.収束電子回折および電子線ホログラフィーによる静電ポテンシャル分布の測定: 独・ドレスデン工科大学のProf.Lichteの研究室において,強誘電体KNbO_3の90度ドメイン境界およびLiNbO_3の180度ドメイン境界の電子線ホログラフィー実験を行い,ドメイン境界における静電ポテンシャルの変化量を評価した.その際,収束電子回折法を併用してドメイン壁両側のドメインに対する電子線入射方位を高精度で合わせることで,回折条件による誤差を最小にした. 2.収束電子回折法によるBiFeO_3強誘電薄膜の結晶構造解析: 基板からの格子歪みにより誘起された巨大強誘電分極が報告されているBiFeO_3薄膜試料の解析を行った.Tripodによる機械研磨を用いてBiFeO_3層への影響を抑えて電子顕微鏡用断面観察試料の作製を行い,収束電子回折法を適用した.歪みを与える基板界面からの距離に依存した格子歪みおよび分極の分布を初めて検出した.薄膜の結晶性の問題もありまだ定量的な静電ポテンシャル分布解析には至っていないが,今後定量解析に向けて必要な要件を得た. 3.収束電子回折法によるAgNbO_3強誘電相の構造解析: ペロブスカイト型構造を持つAgNbO3の強誘電相に収束電子回折法を適用し,発見以来50年以上未解明であった本物質の空間群が中心対称を持たないPmc2_1であることを初めて明らかにした.この空間群に基づく放射光X線および中性子回折による構造解析から,Nb原子およびAg原子の変位による強誘電性および圧電性の発現機構が解明された. 4.多重散乱理論による収束電子回折強度解析ソフトウェアの高速化・高度化: 価電子分布に敏感な低次結晶構造因子の精密化において,マキシマムエントロピー法を援用して高精度化をはかる試みを行い,収束電子回折データから得られる電子密度分布を改良することに成功した.
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