本研究では原子数まで正確に揃えた欠陥の全くない直径1nm台の半導体粒子を合成し、100%の効率で発光する超微細電子素子の創製を目指している。1nm台の粒子は構成原子数nが100を割り、1個の増減で安定性が著しく変化するようになる。この性質を利用すれば、特定のnを持つ安定な粒子だけを選択的に成長させることが出来る。原子数が決まれば原子配列は一意的に定まり、欠陥の全くない完全に単一な粒子が得られる。これにより、効率低下の主因である構造欠陥を取り除いて損失の全くない1nm発光体を作製することが可能になる。 これを追求するために光学材料として優れたII-VI族半導体の一つであるCdSeについて、最近合成法を見出した粒径が1nm台で完全に単一な(CdSe)_13、(CdSe)_19、(CdSe)_33、(CdSe)_34、等を溶液中で選択的に生成した後、引き続き僅かに成長或は表面修飾を施して発光効率の変化を調べて損失の極めて少ない1nm粒子の作製、構造決定、発光過程の同定を行うこととした。 (1)試料作製 試料は主に有機溶剤の一つであるトルエン中で成長させたが、他の有機溶剤でも行う。また新しい試みとして水溶性の試料作製も試みる。水溶液中でも成長させることが出来れば、用途が膨大に広がる。特に1nmの微小な粒子は例えばDNAの直径より小さく、バイオ系への応用も図れる。 (2)表面修飾 発光性ナノ粒子は表面を有機分子で保護する表面修飾により発光効率の上がることが知られている。そこで上記1nm台粒子をTrioctylphosphine (TOP)などで修飾させた試料も作製する。 (3)発光効率及び粒子の構造との関係 それぞれの1nm台粒子について発光効率及び表面修飾による増大を測定し、効率を調べると伴に粒子の原子配列との関係を明らかにする。
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