本研究は、今後X線領域での非線形光学を広く展開していくための基盤的な研究を理論・実験両面から行うことを目的としている。平成22年度は、前年度の結果を踏まえて以下の成果が得られた。 1.X線パラメトリック下方変換と電子状態との関係解明 昨年度までの研究で確立した測定・解析方法を利用して、ダイヤモンドの様々な逆格子ベクトルに関して、アイドラー光が極端紫外領域にある場合の2次のX線非線形感受率を実験的に決定した。同時に、理論的な考察を行い、アイドラーが光学領域にある場合、2次のX線非線形感受率はアイドラー光での線形感受率で表されることを示した。これらの知見をもとに、極端紫外光に対するダイヤモンドの光学応答を原子分解能で明らかにすることに成功した。この時の分解能はλ/380に達し、これまで実現された値を1桁以上も上回る超分解能が実現された。 (研究分担者:玉作賢治) 2.X線非線形光学応答理論の構築 相対論的量子力学に基づいて、物質中のX線非線形光学応答の計算を行った。通常の可視光領域では、2次の非線形応答は非相対論的な取り扱いで十分であり、2次摂動によって理解することができる。本研究では、X線領域の場合には相対論的補正が必要となり、3次摂動によって電子と陽電子のバーチャルな対生成・対消滅の寄与を取り入れることで正確な表式が与えられることを明らかにした。 (研究分担者:澤田桂)
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