| 研究概要 |
*非クラマース結晶場状態を持つ2チャンネル近藤格子の複合秩序変数
非クラマース2重項を結晶場基底状態にもつ近藤格子を,連続時間量子モンテカルロ法(CT-QMC)と動的分子場理論(DMFT)を組み合わせて研究し,新しいタイプの秩序状態を見出した.伝導帯は非クラマース2重項に対応して軌道縮退しており,サイトあたり1個の伝導電子があるモデルをとる.この場合,時間反転対称性は破れているが,磁気モーメントが発生しない秩序が存在する.この秩序では,局在電子の擬スピン(軌道モーメント)と,伝導電子の擬スピンの内積が2つの軌道で異なる.これは遍歴八極子の秩序変数に対応する.その観測は容易ではないので,この複合秩序は隠れた秩序の候補になる.さらに,この複合秩序は,伝導電子の軌道モーメントの奇振動数秩序に対応している.奇振動数秩序は超伝導で盛んに議論されているが,本結果は複合秩序と奇振動秩序の本質的理解に寄与する.
*強いポテンシャル散乱を合わせ持つ磁性不純物の近藤効果
近藤効果は,降温とともに電気抵抗が対数的に増大する現象である.ところが,物質によっては,電気抵抗が対数的に減少する場合があり,逆近藤効果と呼ばれている.この原因の理解は確立していない.我々は,ポテンシャル散乱と交換散乱の干渉効果に着目し,CT-QMCを用いて伝導電子の散乱行列を各温度に対して導出した.干渉効果により,伝導電子の散乱行列は,エネルギーの関数として著しい非対称性を持つことが分かった.これにより,電気抵抗が減少する温度領域が生ずる.しかし,極低温の電気抵抗は,通常の近藤効果と同様にユニタリー極限値に収束することも分かった.
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