研究課題/領域番号 |
20340087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 初果 東京大学, 物性研究所, 教授 (00334342)
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研究分担者 |
高橋 一志 東京大学, 物性研究所, 助教 (60342953)
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キーワード | 分子性物質 / 強相関電子系 / チェッカーボード型電荷秩序 / 電場応答 / 巨大非線形伝導 / 電場誘起準安定状態 / ラマン分光 / 電荷秩序揺らぎ |
研究概要 |
表題の有機導体β型DMeET塩は、1/4充填バンド構造をもつ強相関物質で、90Kで金属-絶縁体転移を起こし、絶縁相はチェッカーボード型電荷秩序相であることが、これまでの研究で明らかとなっている。さらに、0.6kbarの低圧力からTc=4Kの超伝導転移を起こす。このように特異な電荷秩序パターンをもち、さらに異なるパターンとも競合するため絶縁相が柔らかく、電場下でも巨大非線形伝導ばかりでなく、電場誘起準安定状態が観測された。このように、ジュール熱では説明できない準安定状態の電子状態を明らかにすることにより、分子性物質ならでは特異な電場応答を解明する。 本年度は、表題の有機導体β-(meso-DMeET)_2PF_6の単結晶の作製について新しい手法を試みたところ、高品質の結晶を90%以上の確率で得ることに成功した。その結晶について、室温では同系であることをX線構造解析で確認した後、30Kに冷却して低温構造を調べたところ、チェッカーボードと異なり、ダイアゴナルの電荷秩序パターンが観測された。このように、チェッカーボードと異なるパターンが観測されたのは初めてである。さらに磁化率を良単結晶のみを用いて調べたところ、これまでと異なり、70Kで磁化率が半分に急減した。このような多彩な電子状態は、三角格子を形成する電荷フラストレーションを有するためであり、その結果、複数の電荷パターンを取り、この状態が圧力で融解した時に超伝導になり、電場で融解した時に、特異な準安定状態を示すのかは、今後調べていく予定である。 スピンのフラストレーションは有機、無機結晶で近年精力的に調べられているが、このような格子変形を伴う電荷フラストレーションは珍しく、メチル基を有する分子の屈曲および格子の柔軟性が効いており、分子性物質の特性が示されていて、大変興味深い。
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