研究概要 |
1.ブリルアンゾーン境界X点のフォノンクエンチによりプロトタイプ構造相14/mmmから,応力場によって空間群のAbmaとBmabのスイッチが可能な強弾性相への構造相転移を起こすアルキルアミン遷移金属ハロゲン化物の単結晶育成を行った。メチルアミンおよびエチルアミンの塩化物についてFe,Ma,Co,Cu,Znの10種類の単結晶育成条件を決定した。得られた単結晶に対し,多重極限下(低温,強地場,高圧)で熱力学量,輸送特性を測定した。 2.エチルアミン銅塩化物において,誘電率の温度依存性を測定したところ,26Kと37Kで誘電秩序があることを初めて見出した。37Kの誘電異常は,電場をc面内に印可した場合に観測されるのに対し,26Kの誘電異常は電場をc軸に平行に印可した場合に観測される。緩和法による比熱測定を行ったところ,37Kでは明確な不連続を観測したが26Kでは想定制度の範囲内で以上を見いだせなかった。緩和法では潜熱の開放を観測しづらい。この点を勘案すると,37Kは2次相転移,26Kは1次相転移と推測した。これを確かめるため,鹿児島大学伊藤准教授との共同研究において断熱法により比熱測定を行ったところ,断熱法でも26Kに異常が見られなかった。誘電異常は分極のクロスオーバー的秩序によるものと考えられる。詳細な原因は今後も追求する。 3、単結晶X線構造解析を行った。計画調書でも述べたとおり,予備的実験において,メチルアミンおよびエチルアミン鉄塩素化合物において,磁気秩序と同時に構造相転移が起きると推測していたが,P4_2/ncmからPccnへの相転移は間違いないことを確認した。引き続き,この二重相転移の起源を追求するとともに,本年度購入した顕微鏡用極低温クライオスタットを用い,応力場依存性についてもその場観察を行う。
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