これまで、As系充填スクッテルダイトは蒸気圧が高いAsを含むのに、適切なフラックスが見出されず、測定試料は主に高圧合成による多結晶に限られてきた。そのため、純良な試料は得られず、本質的な特性が明らかになっていない。本年度は、特にAs系充填スクッテルダイト単結晶の育成に精力を注いだ結果、LaFe_4As_12に加え、CeFe_4As_12、PrFe_4As_12、NdFe_4As_12、の純良単結晶の育成に成功した。LaFe_4As_12については、de Haas-van Alphen振動の観測に成功し、フェルミ面の断面積の主要な面内での角度依存性と主軸方向での有効質量の評価を行い、現在バンド計算との比較を進めている。CeFe_4AS_12は、これまで、高圧下合成の多結晶と低圧(〜MPa)育成の単結晶では、電気的基底状態が異なり、高圧(4GPa)下で育成された単結晶での決定が望まれていたものである。NdFe_4As_12は、15Kに、局在4f電子と遍歴3d電子と協力的な強磁性転移を示すのに加え、比熱は約6Kにショットキーピークを示すことを見出した。 希土類の充填率が不完全なため、問題が残されている典型物質(ROs_4Sb_l2:R=Ce、Pr、Sm)のうち、特に興味が持たれているPrOs_4Sb_12の高圧下フラックス法による単結晶育成に成功した。この常圧育成のものに比較し、Prの充填率が高い試料で、(1)超伝導転移が一段であること、(2)転移温度Tc及び比熱のとびの大きさが、結晶場分裂幅と明白な負の相関を持つこと、を見出した。これらは、結晶場基底状態と第一励起状態の間の小さな分裂幅が、この物質の超伝導機構や伝導電子の質量増強機構に重要な役割を担っている証拠となる重要な成果と考えている。
|